祐二は平成元年を迎えた記念すべき年に、山田貴美子と久しぶりに出会え、彼女の連れと

楽しい時間を過ごせることが出来、連れの女性である宮下淳子と友達以上の関係になりつつ

あることに楽しみを感じていた。

 同じ教師仲間とは一定距離を置いていた。本音と建て前を見事に使いこなす教育公務員、

すなわち教職員は自分の感性や感覚を麻痺させてもいいから自分の身近な人間との関係を

大切にする。そして教職員同士が結婚する率が異常に高い。比較的公務員の世界で高収入

の先生同士が一緒になれば普通以上の生活が担保できるという打算も入っているのだろう。

教師同士の夫婦は買い物も病院も地元を避ける傾向がある。顔がさすのである。ある教師の

話であったが病院へ行き入院することになって担当医が自分の教え子であったことが判明し

たので転院したという嘘のような本当の話がある。

 祐二の周りにも適齢期の若い教師がいたが祐二は特に興味を示さない。時々、食事会とい

う名のコンパにも参加しない。少し職場では浮いた存在になりつつある。しかし彼は平気で

あった。その分、美術クラブの顧問としてクラブ員と一緒に過ごす時間が長かった。